[ 秋 の 絵 本 」

  九月です。

 暑かった夏とも あと少しでさよならです。

 気の早い 虫さんたちが 草むらでちょこっと ぎこちないけれど

 休み、休み、羽を こすり合わせています。

       *  *  *

 夜、 ちっちゃくて茶色い しば犬君は お散歩に出かけました。

 虫さんたちが、 どんな羽で どうやって楽器を鳴らしているのか

 見たくて たまりません。

       *  *  *

 あっちの草むらで、ふが、ふが。  こっちの葉陰で、ひく、ひく

 鼻をつっこんで さがしました・・・・・

       そして・・・

 「 あっ、 虫さん みい~っけ!!」。

 「 虫さん、 あなたの楽器を きかせて下さいな・・・ 」。

 ちっちゃくて茶色い しば犬君は お願いしました。

    ・・・ でも ・・・

 虫さんたちは びっくり、ぎょう天!!。

 ( ぴたっ ) と鳴らすのをやめて もっと奥の方に

 かくれて しまいました。

    ・・・ シ~~ン ・・・

 「 ごめんね、ごめんね。 虫さんたち おどろかしちゃつて・・・ 」。

          *

          *

          *

  そろ、そろ、 ボク帰らなくちゃ・・・・・。

 ちっちゃくて茶色いしば犬君が ふり返りながら 少しはなれると

 さっきより もぉ~~っと、 たぁ~くさんの

 楽器の音が きこえてきました。

          *

          *

     ボク、 いいんだ・・・もん・・・。

 お友達には なれなかったけれど

 心の中、 すごく ほんわか~って、してるもん。

          *

          *

    虫さんたち、  ありがとう。

 今度からは、 そお~っと通りすぎるから

 とびっきりの 音色を 聞かせてね・・・・。

          *

          *

    見上げた お空の

 お月さまも、  お星さまも

 さっきより もっと ひかり輝いて、  ちっちゃくて茶色い しば犬君と

 深緑色の 草むらの道を  ず~~っと 照らしていました・・・・・・。

                        お。  し。  ま。  い。

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